フランスでは公共の場で顔を隠しちゃだめ!

2012/05/10

フランスで2011年4月、全身を覆う服装を公共の場で禁じる法律が施行された。イスラム教徒の女性が肌を他人に見せないようにする「ブルカ」や「チャドル」と呼ばれる服装の着用を禁ずるものだ。精神的にも経済的にも自立している女性の多い国フランス。女性の立場や権利を尊重するフェミニズム的視点からヨーロッパ人にとって女性抑圧の象徴であるブルカやチャドルを国内では禁じようという視点が主だった。

ブルカやチャドルは、イスラム教圏では法律で着用を義務付けている国もある。特にイランでは「女性の自由と尊厳」が甚だしく侵されている。『どうすればフランス人になれるの?(日本語訳:モンテスキューの孤独)』という本には革命後のイランに育ち、命がけで亡命してきたイラン人女性が登場する。故国で自由や人権を奪われたからこそ、主人公はフランスの自由に熱い思いを抱くのだが、自由がありあまっている日本人にはこの感情はちょっと理解できない気がする。

このブルカ禁止令について、中立的なフランス人は、フェミニズムに見せかけたイスラムに対する新たな差別だと見る傾向もあり、フランスの中でも意見が分かれている。

この問題をイスラム教文明とキリスト教文明の対立であると切り出すコメンテーター。イスラム文化で育った人たちがヨーロッパに移住し、祖国の文化を持ち込んだが、それを認めてはフランスがフランスでなくなるというのがフランスの考えです。

イランの女性たちの生活は想像以上に息が詰まるものです。宗教に関してあまりにも寛容すぎる日本人は、なぜここまで2つの文明が衝突するのか、わからないでしょう。日本人は、このような現実を少なくとも知っておく必要があります。そうでなければ、ホルムズ海峡の緊迫した情勢も理解できません。

イスラム文明圏には、これまで人権を求めた革命はありませんでした。一方、フランスではユマニズム=神よりも人間が上だという人間中心主義が何百年もかけてはぐくまれてきました。この人間中心主義を侵してくれるな、こちらの価値観に従ってくれ、というのがフランスの穏健派の思いだと思います。チャドル1枚から人間の思惑や国際政治、宗教など、いろいろなものが透けて見えるレポートでした。

【特派員情報】

フランス・パリ近郊に住む森永かなこさんからの情報でした。