シリーズ「私の好きな風景」(2)〜ポーランドの墓地〜
2012/01/05
ポーランドの墓地はおどろおどろしくない。管理が整然と行き届いているせいもあるが、この墓地という場所がひどく美しい場所に思える日が年に一度訪れる。私が好きな11月頭にある万聖節と万霊節の時期だ。11月1日は聖人の日、2日は死者を追憶する祭日で、日本のお盆のようなものに当たるものだ。
この1日は国の祭日ともあり、親族の墓参りをするためにポーランド中で人が先祖の墓場へ訪れる。
この日のために、墓を管理する担当の親族は墓を綺麗に掃除し、花や針葉樹の枝などで飾り付けをしておく。そして当日、多くの人は蝋燭を手に墓地に向かい、先祖の墓に光をともすのだ。この蝋燭の一番ポピュラーな形は色とりどりのガラス瓶の中に蝋が入ったものである。風が吹いても火が消えないという現実的な利点と共に、ステンドグラスのような厳かな光を闇の中に放ち、その光はこの世のものとは思えない美の世界を見せ付ける。
訪れる親戚の数によっては、墓の上に蝋燭というよりは、蝋燭の下に墓があると思わせる場所も珍しくない。この日は国中で幾多の蝋燭の炎がゆらめき、あの世とこの世が光の中で混じりあう幻想の夜となるのだ。
【ポーランドの墓地1】
【ポーランドの墓地2】
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