シリーズ「わが家のエネルギー事情」(8)

フランスの火事の原因の3分の1が電気~フランス~

2011/11/02

ばっちーん!
またブレーカーが上がって、家中の電気が消えました。2ヶ月に一度くらいでしょうか、前のを忘れた頃、次のが起こります。原因は、電気コンロの安全装置が働いたから。台所でどこからか水が漏れているのかと何度も点検しましたが、みつからず。湿気のせいのようです。
その昔、フランスを旅行して、未熟者だった私は「歴史を感じさせる街並で美しいなあ。こんな昔ながらの建物に住んでみたい」なんて思ったものです。ところが、家が古いということは、当然、電気設備も古いのです。これが問題を引き起こすのです。
前にニースで住んでいた家では、ゴキブリが発生したので、ある日私は、台所の奥深くまで掃除することを決心しました。取り外せるものをすべて外してみると、今まで目に触れる事のなかった電気の差し込み口を発見しました。ここに備え付けの冷蔵庫や電気コンロのコンセントが差し込まれていたのですが・・・ぞっとしました。差し込み口はぼろぼろで、半ばぶらさがっており、周りは錆びて茶色くなっていました。こんな所から電気をひいていたのか、水漏れが起きていたら、感電して死んでいたかも。目に触れる所にある差し込み口は、度重なる改装で塗り替えて、一応表面はきれいにしてきたのでしょうが、目に見えない所は古さがそのまま。
それでもこの家は南仏のニースだったので、湿気の問題はありませんでした。今の家はパリなので、1年中寒くて湿気がかなりあります。前の家でこりた私は、ブレーカーが飛ぶようになって、台所の裏の見えない所にある差し込み口を探しました。さいわい、前の家ほどはひどくありませんでした。でも、周りの壁にカビが生えています。でも手が届かないし、台所家具が取り外せないのです。もうめんどくさいので、そのままにし、換気にだけは気をつけて、戸棚のドアを閉めっぱなしにしないようにしています。

こんな具合ですから、フランスでは電気が元の火事は大変多いです。年間約25万件の火事のうち、3分の1が電気が原因で、1万人が事故にあい800人が亡くなっているそうです。また、「住居における電気の安全考察グループ」(Gresel)によると、古い建物の半数以上、約700万軒の電気の設備は安全の基準にかなっておらず、230万軒が「特に危険」に区分けされると言います。(「ル・テレグラム」の記事より)。フランスでは、法律で家の保険に入る事が義務づけられていますが、火事だ水漏れだと、設備が古いがゆえの事故が多いからでしょう。今では「歴史を感じさせる建物なんてもうこりごり」というのが本音です。

●節電できる建物のシステム

そんな恐ろしいフランスの古い建物ですが、良い所もあります。建物の設備そのもので、節電できるような仕組みになっているんです。日本では、誰もいない廊下やトイレに光々と電気がついていますが、フランスでは人が来れば自動センサーが感知して、電気がつきます。一定の時間が過ぎると、自動的に消えてくれます。あちこちにボタンがありますので、もっと長くいたければそれを押せば再び電気はつきます。自動センサーがない所では、自分でボタンを押して電気をつけます。こちらも自動的に消えます。このやり方が定着しているので、「必要ならつける。必要ないなら消す」という意識も日本より高いと思います。日本でも節電が定着してきましたが、今まで全く必要ないところで電気を浪費しすぎたのではないでしょうか。日本にもすべての建物にこのシステムができて、定着してほしいです。

●物件情報に記されている、、電気消費のレベル。

さて、フランスでも電気代は高いと言われています。どの国の人も言っているようですが、どこの国が安いのでしょうね??? 庶民にとって自衛する手段といえば、家を借りる時、買う時に気をつける。これが一番大事です。
我が家のエネルギー事情(5)イタリアで、【イタリアで主流の温水を循環させるシステムのヒーター】の写真が掲載されていました。これはフランスでもとてもポピュラーで、古い建物だとたいてい設置されています。これだと暖房にお金がかかりません。ところが、温水式ではなく、電気ヒーターが設置されている所も多いのです。(暖炉が健在な地域もあります)。電気ヒーターを使うと、電気代がはねあがります。

ですので、家を借りる時に、温水ヒーターがあるのかないのをチェックすればいいのです。この条件は、賃貸情報に必ず明記されています。

家を買う時も同じです。不動産会社には、窓に物件の案内がはられていますが、ここに電気効率がどのくらいのレベルかが、必ず統一基準で記されています。

ただ、フランス人って頑丈だなと良く思います。パリなんて温水ヒーターだけでは寒すぎるのに、薄着でうろついて全然平気みたいです。私が買って来た電気ストーブでさらに温めていると「おばあさん」とからかわれます。でも日本人が寒がりなのは当たり前。「白人は平熱が37度だけど、私たちはもっと低い。37度は熱の始まりで、薬を飲むくらいだからね」と、理路整然(?)と説明することにしています。

美しいパリの外面。内側では、電気の事故だ、水漏れだの騒ぎが頻発している・・・
【美しいパリの外面】内側では、電気の事故だ、水漏れだの騒ぎが頻発している・・・

不動産会社の物件案内。統一基準でAからGまであり、Aが一番電気消費が低く、Gが一番高い。
【不動産会社の物件案内】
統一基準でAからGまであり、Aが一番電気消費が低く、Gが一番高い

【特派員情報】


フランス・パリ在住 今井佐緒里(Saori Imai)さんからの情報でした。
大学卒業後、出版社で編集者として勤務。月刊会員誌『セブンシーズ』では、特集記事・連載企画の他にファッション・ジュエリーページ担当。ニースに約7年間滞在してコートダジュール・モナコ・プロヴァンスの記事を発信。2009年よりパリ在住。パリ第8大学政治学部(国際関係歴史専攻)卒業。異文明の出合い、欧州連合の挑戦、それらが照らし出す日本の姿などがテーマ。著書に『ニッポンの評判』(新潮社/編著)、『世界が感嘆する日本人 海外メディアが報じた大震災後のニッポン』(宝島社/共著)などがある。