シリーズ「わが家のエネルギー事情」(6)
節電 と発明で、電力を有効活用
~ニュージーランド~

2011/10/06

ニュージーランドの電力はその74パーセントまでが水力、地熱、風力といった再生可能エネルギーで賄われています(2010年)。今年になってから世界最大規模といわれる潮力発電所の建設にもゴーサインが出、2025年には全供給の90パーセントにまで再生可能エネルギーを引き上げる目標を政府は掲げています。人口わずか400万人のこの国には原発は不必要であると同時に、1987年に制定された、非核地帯、軍縮及び軍備管理法上禁止されているために原子力発電所は存在しません。
この国の一般家庭の生活はかなり電力に頼っているといえます。電気コンロや電気ケトルが普及しているので、お料理をするのも、お湯を沸かすのも電気ですし、ヒーターも電気のものが多く出回っています。家庭用電力の値段は24.98NZセントで、32.98NZセントの日本と比べ安いですが、所得自体が日本より低いので、そう安いとは感じません(2009年)。
そのため人々は節約に熱心な向きがあります。電圧が高く、安全性の面から壁にある電気のコンセントには差込口だけでなく、スイッチがついています。電気器具を使っていなくてもスイッチが入っているとスタンバイの状態で電気を使っていることになるので、それを切っておくと節電に役立ちます。

一般的な家庭の電気のコンセントの差込口
【一般的な家庭の電気のコンセントの差込口】
使っていない時には横のスイッチをこまめに切るのが節電につながる。

またお湯の蛇口にゆるみがないようにしたり、一般家庭に多くある、水を電気で温め、それを貯蔵しておくホットウォーター・シリンダーの周りに断熱材を巻いたり、それが備え付けられている戸棚の中で小型の洗濯物を乾かしたり、また節電用の電球を使うなどは基本中の基本です。そのほかにも温かい空気が上昇するのを利用し、天井近くに物干しを設けている家もあります。?一軒家の場合、室内暖房の熱効率を上げるためには断熱材を壁、床下、天井に入れると効果的ですが、そのコストは設置費も含め馬鹿になりません。そんな時に利用したいのが政府の「ウォームアップ・ニュージーランド」プログラム。2000年以降に建てられた家という条件つきではありますが、断熱材などの購入の際に最高1,300NZドル、二酸化炭素を排出せずに室内を温めることのできるヒーターなどに最高500NZドルの補助金を出してくれるのです。

床下に入れた断熱材
【床下に入れた断熱材】
床下だけでなく、天井から熱のほとんどが放出されてしまうので、屋根裏にも断熱材は必要

電力会社も電力の生産のみでなく、「エネルギー効率の良い家」に興味を示しています。ニュージーランド国内最大手の電力会社、メリディアン・エナジーは今年9月末から10月初旬にかけて米国で行われる「ソーラー・デカスロン」に出品するヴィクトリア大学チームの主要スポンサーになっています。これは太陽光エネルギーで電力を賄う家屋をデザイン・建築し、その効率、コストパフォーマンス、そして外観の良さを競うというもので、同大学は南半球から初の出場という快挙を成し遂げています。

床下に入れた断熱材
【メリディアン・ファースト・ライト・ハウス】
「ソーラーデカスロン」に出品されるヴィクトリア大学チームによる

ニュージーランド人は節電上手なだけではありません。エネルギー問題に直面している昨今、代々受け継いできた開拓者精神を発揮し、発明でもってその解決にチャレンジする動きも見られます。ある男性は減速バンプを通る際の車の重量・スピードを利用して電力を起こすのに成功し、現在シンガポール政府の協力を得、その開発に着手しています。子どもも負けてはいません。特に大地震の影響で停電を経験したクライストチャーチの子どもの中には、携帯電話を充電したり、ラジオを聞いたりするための電気を、お湯を沸かす際のポットの熱で創り出すことに成功しています。地震後しばらく水は沸騰させて飲まなくてはならず、その際に出た熱を利用しない手はないと考えた結果です。焼け石に水かも知れません。それでも世界的に問題化しているエネルギー供給の問題に、草の根で取り組むニュージーランド人の姿勢は頼もしく感じられます。

床下に入れた断熱材
【メリディアン・ファースト・ライト・ハウス】
100パーセント太陽光によって切り盛りされ、なおかつエネルギーを極力節約できるように造られている

【特派員情報】

ニュージーランド在住 クローディアー真理さんからの情報でした。
 

ニュージーランド在住 クローディアー真理さん

1998年よりニュージーランド在住のフリーランスライター。育児誌、エコ関連誌・ウェブサイト、クロスカルチャー誌などを中心にリサーチ・取材・執筆・写真撮影・ビデオ撮影を行う。
“Create something from scratch(ありあわせのもので何かを創り上げる)”というこの国の人々の精神をこよなく愛する。
ウェブサイト、「ライター、クローディアー真理の『もっとNZを知ってほしい!』」には、ニュージーランドでの日々の生活で感じたことを書き留めたエッセイなどを掲載。