シリーズ「わが家のエネルギー事情」(2)
英国家庭は電力会社選びに四苦八苦
~イギリス~

2011/08/18

先日スーパーのレジで紙切れが渡されました。それはこのスーパーでも電気とガスの販売を始めて、今加入契約すると10%引き、スーパーの買い物と同じにガス電気料金の支払いに応じて買い物ポイントがもらえ、また買い物で貯めたポイントでガス電気料金を払うことも出来、その上スーパーが行っている銀行業務の自動引き落とし払いにすれば、数%得というのです。それを見て、私が電気とガスを契約している会社でも買い物ポイントがもらえるはずなのに、近頃入っていないことに気づきました。

帰宅してインターネットで調べて見ると、買い物ポイントは3ヶ月前に廃止されていて、しかも料金は他の販売会社よりかなり高めになっていました。次々と現れる新小売り販売業者(ガス,航空,通信、水道会社からスーパーマーケットまでが参入)は、価格の割引以外に,航空マイレージ・ポイントや買い物ポイントの提供、ガスと電力のパッケージ供給などあらゆる手段を用いて顧客獲得にしのぎを削っています。しかし消費者を誘う甘い誘惑は短くて数週間、長くても2、3ヶ月で期限切れ、契約した途端に値段が跳ね上がることがよくあります。この日スコティシュ・パワーの標準価格が一番安く、我が家のEDF料金よりも10%も安かったので、私はスコティシュ・パワーに変更しようかと思いましたが、途中解約料金が50ポンドと知り躊躇しました。

と2日後、スコティシュ・パワーは9月から20%値上げすると発表しました。飛びつかなくてよかったと胸を撫で下ろしたのです。このように、インターネットで値段が一覧出来るものの、刻々と変動する値段に消費者は踊らされっぱなし、消費者の半数以上が供給事業者の変更や契約の見直しを行っているのですが、一苦労です。

選択肢が多過ぎて、どれが得なのか迷うからです。インターネットで電気料金、ガス料金、電気とガスを合わせた料金を見ると、それぞれに約150通りの選び方が載っています。値段一覧表には、各社が10通りほどのプランとその契約期間をずらり明記しています。しかし値段は日々変動します。2,3年契約の固定価格もありますが、最も高い選択です。

英国の年5%のインフレを考慮すれば、悪くないという人もいます。一般に最も低価格なのは、電気とガスが一緒のプランをオンライン契約し、毎月銀行引き落としにする方法のようですが、どの会社を選び、いつ変えるかが問題です。また隣近所みな違う販売会社から電力を買っていても、同じ電線で配給され、目盛りを読みに来るおじさんも同じです。

故障や停電を告げるのはそれぞれの契約会社ですが、修理会社は同じです。多くの会社で10%ほど割高でグリーン・エネルギーが選択出来ますが、同じ電線で同じ電気が送られてくるのに変りありません。自宅に送られて来る電気が風力か原子力製なのか知る由もありません。電気やガス代を払う会社を自由に選択しているとはいうものの、その仕組みが今一つ理解出来ないのが、多くの消費者です。今や電気もガスも株と同じ投資だ、賭けだ、賢く投資して儲けようなどと聞きますが、果たして儲けた人がいるのかどうか、自分が選んだプランが一番賢く経済的と太鼓判の押せる人は誰もいないようです。

自由化は選択肢があり過ぎて不便と嘆く人さえいます。

英国は世界に先駆けて電力自由化を実施した国です。
 それまでは発電から消費者に電力を届けるところまで国有事業が一貫して手がけていました。イングランド・ウェールズでは1990 年に発電・送電・配電・小売供給という事業に分割し、発電会社と送電会社に民営化(所有、機能分離)して、発電市場を自由化ました。小売市場では、区域内の消費者に独占的に電力供給してきた国有の配電局が民営化され、1999 年までに全ての消費者が供給事業者を選択できるようになりました。発電と小売には競争を、送電と配電には誘因規制を導入して、 電力事業の効率化と消費者への利益の向上を目指したのでした。2005年にはスコットランドにまで拡大され、英国卸電力送電制度(BETTA)ができました。BETTAの下では、所有者の異なるスコットランドの送電系統(2系統)とイングランド・ウェールズの系統が、1つの系統運用者(GBSO)によって運用され、
BETTAの下で卸電力は一般商品と同様に相対契約や私設取引市場を通じて自由に取引されています。発電事業者は取引した契約に沿って発電し、小売事業者は契約に沿って供給することが基本となり、契約量から外れた電力量はインバランスとしてインバランス価格で決済されます。GBSOの役割は、自由な電力取引を前提とした市場で、需給調整をリアルタイムで行うことにあります。需給調整に必要な電力は需給調整市場で時々刻々取引されています。

 自由化で電力配給網は免許制となり、発電免許・送電免許・一般供給免許・第2種供給免許を取れば、新規参入が認められます。2010年現在、発電免許所有は94社(積極的に事業を行っている会社はその半分程度で、残りは自家発もしくは活動を行っていない事業者)、小売供給免許所有は89社ですが、英国の大手電力会社はRWE系(ドイツ)、E.ON系(ドイツ)、EDF系(フランス)、SSE系(英国)、イベルドローラ系(スペイン)の5大グループに吸収集約され、これに自由化された旧国有ガス事業者(ブリティッシュ・ガス社)が加わり、英国の電力小売市場は、これら6大グループが95%のシェアを占めています。

 さて自由化は、消費者に取って良い面もあります。これまで故障や停電になってもなかなか直しに来てくれなかったのに直に来てくれます。故障や停電も以前に比べればずっと少なくなりました。価格の方ですが、2011年1月のEUエネルギー調べによる家庭のガスと電気の平均値段表を見ると、27カ国中高い国から英国の電気は18位、ガスも18位に高い国です。

     電気、ガス代を払えばポイントがもらえるスーパーのビラ
  【電気、ガス代を払えばポイントがもらえるスーパーのビラ】

私がスーパーでもらったビラは数週間前で、うっかりなくしてしまいました。
ここに別のスーパーのビラをお送りします。
これはポイントがもらえるものです。このスーパーもクレジット・カードを出していて、そのカードで払えば更に得です。また買い物ポイントを貯めて、そのポイントでガス、電気料金を払うことも出来ますし、電気、ガス代を払えばポイントがもらえるのも一緒です。


【特派員情報】

イギリス・ケンブリッジ在住 いそのゆきこさんからの情報でした。
 


特派員 いそのゆきこさん
著書:「BBC TALK JAPANESE」

関連サイト: :地球はとっても丸い