シリーズ「世界の泥棒」(20)
タクシー運転手4000人に拳銃所持を義務化!?
~ペルー・リマ~

2011/06/16

 多発するタクシー強盗に対して選んだ方法とは…
日本でもタクシーの売り上げを狙う強盗事件が多発しているそうですが、ここペルーもそうした犯罪は多く、タクシー運転手たちは自らの身を守るためあれこれ策を講じています。
リマ市内で営業するタクシー運転手のアントニオさんは、2年前クビ締め強盗にあいました。後部座席から首を絞められ、一瞬のうちに気絶してしまったのだとか。気がついた時には、財布や私物を全て奪われていたそうです。しかし本人に怪我はなく、車も無事だったそうですから、まだ運がよかったと言えるかも知れません。
現在、彼の運転席は鉄格子によって守られています。この格子、見た目よりもしっかりしていてびくともしません。また助手席側の仕切りも高くし、運転席が完全にカバーされるようしつらえてあります。「拳銃で襲われたらどうするの?」と聞くと、「俺を撃ったら、誰もハンドル操作ができないだろ?だから大丈夫」とのこと。命を守るこの鉄格子の設置費用は100ソーレス(約3200円)。「十分価値があるよ」とアントニオさんは笑っていました。

「この鉄格子のおかげで今は安心だよ」とアントニオさん。
【「この鉄格子のおかげで
今は安心だよ」とアントニオさん】

「タクシー代の受け渡しがしづらいところが難点
【タクシー代の受け渡しがしづらいところが難点】

しかし、こうした個人の対応では済まなくなっている地域もあります。

ペルー北部海岸地域の街チクラヨでは、ここ数年タクシー運転手を狙った強盗や恐喝が相次ぎ、地元のタクシー会社やそれらが参加するタクシーサービス協会にとって、大きな問題となっていました。今年に入ってまだ一ヶ月も経たぬうちに、これらの強奪犯グループによって2台のタクシーが焼かれるという事件もありました。そのうち1月20日に起こった事件では、上納金を納めるよう恐喝されたタクシー運転手が支払いを拒否したため4人の強盗に殴られ、その後タクシーに火炎瓶を投げつけられたそうです。あっという間に燃え上がってしまったタクシー。この運転手は報復を恐れ、自身の名前を公表することを拒んでいます。

1月20日の事件を伝えるニュースの画像
【1月20日の事件を伝えるニュースの画像】

こうしたことからチクラヨのタクシー協会は、所属するタクシー運転手4000人にリボルバー銃(回転式拳銃)を携帯させることを発案しました。「警察も司法も当てにならない。自分たちの身は自分たちで守る」と言うのです。この極端な対抗手段に、「チクラヨが第二のコロンビアになってしまう」と心配する声も上がっていますが、今のところこの方針は変わらないようです。

拳銃を所持しているタクシーになど乗りたくないと思うのが人の常。つり銭トラブルなど、ちょっとしたいざこざで撃たれでもしたら目も当てられません。また小遣い欲しさに拳銃を横流し、「失くした」とシラを切る運転手も出てくるでしょう。タクシー協会はこうした問題にきちんと対応できるのでしょうか?何より、前述の犯行グループがこの方針に対し報復措置を取ることも予想されます。暴力に銃で立ち向かっても、決して根本的解決にはなりません。

チクラヨはプレインカ時代の遺跡や博物館も多く、観光が盛んな美しい街です。警察は1日も早く犯行グループを逮捕し、地元の人々や観光客が安心してタクシーを利用できるようにしてもらいたいものです。

街のガン・ショップ。ペルーでは一般市民も許可証があれば拳銃を所持することができる
【街のガン・ショップ。ペルーでは一般市民も許可証が
あれば拳銃を所持することができる】

【特派員情報】

ペルーの首都リマ在住 原田慶子さんからの情報でした。
 

ペルーの首都リマ在住 原田慶子さん
Website:keikoharada.com
Blog:ペルー片道切符