シリーズ「世界の泥棒」(18)
拳銃を持った強盗団
~ブラジル・ベレン~

2011/05/19

 サンパウロから3000キロ離れたアマゾンのベレンという街へ夫と行った時のこと。地元の日本人2人が「せっかく遠くから来たのだから」とカラオケ屋さんへ連れて行ってくれた。そのカラオケ店は知る人ぞ知る店で、ひっそりと住宅街にある。楽しく飲んで歌って出てきた矢先。まさにカモを物色中の強盗団に出くわしてしまった。

強盗の一人は拳銃も持っていて、一味は慣れたものだ。5人ほどでグルになっており、ボスが同行の日本人から盗んだ車中から部下たちに指示を出している。治安の悪いブラジルでは強盗やひったくりなどは日常茶飯事。慌てず騒がず映画のように4人で手を挙げると、強盗は「手を下げろ」と言う。強盗だとバレて、道行く人に怪しまれてはいけないからだ。あちらはもっと馴れていた。

最初に車の所有者から車のキーや現金、腕時計が盗られた。次にもう一人の地元の友人からは、ポケットに入っていた現金と腕時計、家の鍵。私も少々の現金と腕時計を盗られてしまった。最後に夫の番となった。夫はボロボロのTシャツによれよれのズボンという洒落っ気が一切ないスタイルで通している。腕時計も普段はしていないのだが、旅先ということもあり、日本の弟から貰ったベルトの壊れたGショック初期版をしていた。悔しながらも命には代えられないから、素直に左手を差し出すと、時計を見た強盗はチッチッチッと人差し指を横に振り「これは要らない」と言う。あまりのボロさに泥棒すらも不要の烙印を押したのだ。

強盗団が去った後、たった一人腕に時計が残った夫は「何か悔しいなぁ。持って行ってくれよって感じ」と一言。友人たちも彼のスタイルに脱帽の大爆笑。強盗に慣れているブラジルでもこの話をすると、必ず笑いの渦となる。

夫の腕と「盗まれなかった腕時計」
【夫の腕と「盗まれなかった腕時計」】

【特派員情報】

サンパウロ在住 大久保純子さんからの盗難体験でした。
 

サンパウロ在住 大久保純子さんブラジル・サンパウロ在住。日本で専門紙の記者を経て、1997年よりブラジル邦字紙記者として2年間勤務。
現在はフリー。2005年には母も呼び寄せ、シルバー移住にも成功。
ライフワークとして、移民の方々のお話を記録するインターネット・ラジオ「ブラジル日和」を放送中。共著『女たちのブラジル移住史』(毎日新聞社刊)、ブログ「自由気ままにリベルダーデ」