ベルギーは、分裂前夜?

2011/02/24

チョコレートやビールなどグルメで有名なヨーロッパの小国がベルギー。
19世紀になって作られたフランス語だけを国語とする近代国家ベルギー。しかし、現在では、フランス語とオランダ語、そしてドイツ語をも国語とし、ゲルマンとラテンというヨーロッパの二大民族が共存する複雑な国です。
そのベルギーで、昨年2010年6月の総選挙以来、8ヶ月(250 日)を経過しても、未だに連邦政府が組閣できず、政治の空白が続いています。組閣できない期間も過去最長を記録。分裂の噂すら…
日本人にとって、ベルギーは「わかりにくい国」という印象でしょうか?
コメンテーターは、ベルギーがEUの設立メンバーだったことを例にベルギー人を分析します。その答えは、名探偵エルキュール・ポワロにも隠されているようです。
組閣できなくてもベルギーの人は、周囲の国から攻めらる恐れがないことを知っています。内閣なんてなくても大丈夫。そんなふうに日本人が考えるのは短絡的で危険なことなのです。

(注):動画本編で司会者が総選挙の時期を2009年6月と言っていますが、2010年が正しいので、訂正します。

(追記):2011年12月5日に、約540日ぶりに正当な政府が発足したとのことです。

【特派員情報】

ベルギー・ワーテルロー在住の栗田路子さんからの情報でした。

特派員 栗田路子さん 神奈川県生まれ。上智大学卒。夫の急逝後、渡米し、米国コーネル大学およびベルギー・ルーヴァン大学にてMBA(経営学修士)取得。再婚し、二人の養子とともに、ベルギー在住。ベルギービール日本向け輸出に従事。現在は、セミ・リタイア宣言し、寄稿や執筆、日本のメディアのためのリサーチやコーディネートなどを請け負っている。ベルギービールの他、教育、医療、障害児など、守備範囲は広い。
夫とともに(株)マルチライン経営の他、コーディネータースクラブ・ベルギーを運営。
障害孤児の養子縁組を支援するチャリティ「ネロとパトラッシュ基金」を運営。
障害を持つ子供と供に赴任する日本人駐在員をサポートする「元気ママの会」も主催。 寄稿を貼り付けたブログSlow Lifeで発信中。

【ベルギーの複雑さを解説したアニメーション】
"A film by Jerome de Gerlache, written by Marcel Sel, music by Laurent Aglat, voice-over Emma Doman."



(アニメーションの日本語訳・栗田路子さん)

ベルギーは、世界一つまらない国という評判です。国民は実にフレンドリーでフレンチフライにマヨネーズをつけて食べ、スイスブランドのためにチョコレートを一生懸命供給しています。その国が冗談みたいな小さな破片に分断されようとしている話を理解するのは、なかなか難しい。そうする以外に方法がないのだけど、しかし、ベルギーは、はっきり言って、死にそうに「つまらん」国なんだ。

ちょと待ってくれ、それは違う!ベルギーがつまらない国だなんて、偏見だ。
ベルギーは世界で最も奇妙奇天烈な国。なんてったって、身長20cmほどの銅像があなたに向かって小便ひっかけてる国ですよ! 総理大臣が、「国歌歌えます?」って聞かれて、隣の国の国歌を歌ってしまう、そんな国、他にあります?

独立以来150年の間に、ベルギーが成し遂げた偉業は、世界一非効率的な政治の仕組みを作りあげたこと。なんたって、ベルギー人は、何でもかんでも複雑怪奇にするのがうまい。公用語だって、三つあるしね。中央政府があるにはあるんだけど、同時に独立した国みたいな地域が3つあって、それぞれの「政府」は中央政府と同等以上の力を持っている。国として舵取りできるはずがありません。

ブリュッセル地域だけが、蘭・仏二ヶ国語になったのはラッキーだったかも。フランダース地域は、オランダ語だけの単一言語地域で、フランス語話者がたくさん住んでいて、公文書をフランス語でも受け付けてくれる。
BHV地区と呼ばれているブリュッセル近郊の2つの市では、フランス語話者はほとんどいないのに、フランス語話者だけはフランス語で裁判を受ける権利が守られている。ワロン地域も、純粋なるフランス語だけの地域だが、ドイツ語を話すマイノリティが住んでる。


で、まあ、こういうたくさんの言語的マイノリティをなんとかするためには、3つの地域政府ではどうしようもないからと、ベルギー・ウィットローフが考えた傑作が、3つの言語共同体:オランダ語、フランス語、ドイツ語のそれぞれの共同体。中央政府と衛星国のような三つの地域に加えて、この言語共同体もそれぞれまた別に、政府と議会を持っているわけ。たとえば、フランス語共同体は、ワロン地域とブリュッセル地域に住むフランス語話者のための文化・社会サービスを提供するわけ。だけど、このフランス語共同体は、フランダース地域に住む30万人のフランス語話者にはサービスを提供してはいけないことになっているから面倒。フランダース地域は、単一言語地域で、別の言語を話す人も全員オランダ語を話さなければいけないことになっているからね。あああ、ばかばかしい!


ドイツ語共同体なんて、フランス語地域内のワロン地域でしか活動しちゃいけないことになってる、オランダ語共同体は、ブリュッセル地域でも活動してもいいことになっているのにだよ!


というわけで、ブリュッセルに住んでいるフランス語を話しているある家族は、おじいちゃんの年金は中央政府からもらって、子どもの学校は、オランダ語共同体がやっている学校に行かせるけど、子どものピアノ教室はフランス語共同体がやっているのに行かせて、ゴミの回収はブリュッセル地域政府のお世話になる、、、ということになるわけ。4つの別々の政府の省庁がひとつの家庭にかかわってる・・・わかります? だから今のベルギー人の生活は一緒にやってかなきゃいけないようにできていて、簡単に分断できないんだって。とにかく、簡単にすませることを、むちゃくちゃに複雑にすることにかけてぴか一のベルギー官僚機構!なんとかなってるってことは、どうにもならないってこと!