シリーズ「世界の泥棒」(1)
トイレが丸ごと盗まれた!
~オランダ・アムステルダム~

2010/10/21

他人のものを盗むのは悪いことではない!泥棒が盗難品を売れば、彼の懐は暖かくなるわけだから…などという屁理屈が、堂々とまかり通ってしまうオランダ。それを地でいくような盗難に、私も3回ほど遭ってしまいました。
 驚くべき体験の一つ目は、新居のトイレが丸ごと盗まれたこと。引越ししたその日の夜、物音に目が覚めて一階に降りていくと、何と!トイレがなくなっている!玄関の横にあったトイレが、ものの見事に、ドロン。壁もろともきれいにくり抜かれ、便座から掃除用のブラシまで見事に盗まれてしまいました。駆けつけた警察官によると、オランダで現在流行中の、よくある手口なのだとか。犯人は、音の非常に静かな小型のシャベル・カーを使って犯行に及んだのだろう、と呆れ顔で見解を示されました。

全て盗まれたトイレ内部
【全て盗まれたトイレ内部】

こんなトイレなら、盗難に遭わないかも?!
【こんなトイレなら、盗難に遭わないかも?!
 これは近所にある美術館に出品された芸術作品です】

 二つ目の珍盗難は、ズボン。それも、履いたままのズボンをスられそうになったのです。10年ほど前のこと。ゆったり目のズボンが流行し、便乗した私も1本購入。それを履いてトラム(路面電車)に乗り、隣の町へ行く途中のことでした。かなり混み合って来たので、電車後部への移動を試みたのですが、どうしても動けない!ズボンが、どこかに挟まっているのか?と思いきや、なんと!ズボンの脇が、誰かにしっかりと引っ張られている!引っ張っている張本人は誰かと見極めれば、ごく普通の中年女性。それも、驚愕した表情で、こちらをじっと見つめていたのです。私がここぞとばかりに容赦なく睨みつけたせいか、女性はズボンをあっさりと手放し、「あまりにステキだったからついつい手がでちゃったの!でも、しょうがない。残念だけど、同じのを買うことにするわ」ですって。謝罪の言葉も何もない、スリ女の笑顔を、私はぼんやりと見つめるばかりでした…。

 最後の3つ目、これこそが究極の盗難体験!池に放しておいたカメを見事に盗まれてしまいました。友人から譲り受けたカメを、庭の池で飼っていたのですが、餌を与えても姿をまるでみせない日が続いたのです。心配になりあちこち探して回ると、池の中に不審な黒い影が…いなくなったカメかと大喜びしたら、底からぬっと顔を出してきたのは、何と、カメではなく大ナマズ!!どうやら、カメがほしくて盗んだ誰かが、交換条件で自分のペットを放り込んだものとみえます。今では我が物顔で池の底を泳ぎまわっている大ナマズ。いつの間にかカメに変わって我が家の住人(住魚?)になっていたのでした…。

いつの間にか、ナマズと交換されていたカメ
【いつの間にか、ナマズと交換されていたカメ】

【特派員情報】

オランダ・アムステルダム在住 カオル フリードリヒスさんからの盗難体験でした。
 

カオル フリードリヒスさん最初に渡ったイギリスで出版社に入社し、同僚だったオランダ人と結婚、渡蘭。
地元新聞社で特派員として勤務しながらジャーナリストに。
衣食住から政治経済・文化に至るまで最新情報を各メディアに発信中。
著書に、『ニッポンの評判』(新潮新社刊)