象の孤児院

2010/02/04

スリランカは「象の国」といってもいいほど、象がたくさんいて、しかも大切にされています。もともとスリランカという国は、鳥も動物も人間もまさに‘共存’している国で、首輪をつけた犬や猫はみたことがなく、自由に街や村をかけ回っています。牛や馬もそうです。車が止まったと思うと道の真ん中に牛が・・・。車は牛が道端に寄ってくれるのを待つか、傷つけないように車がよけて進みます。猿、リス、鶏もしかり、何にも怯えることもなく安心しきって、のびのびと暮らしているのです。全島禁猟区になっている国です。

そんな国だから、象のためにこのような施設があるのも当然でしょう。コロンボから古都キャンディへの途中、ケーラッガにその孤児院はあります。森で傷ついたり、親を失った象たちが保護され、手厚い介護をうけて暮らしています。象舎では大きな哺乳瓶でミルクを飲ませるところを見学したり、象と触れ合ったりできますが、圧巻はこの水浴風景です。毎日2回、象舎から何十頭もの象を河へ連れていき、約2時間、水浴させます。象舎から河まで約300メートルくらいでしょうか、両側にはみやげ物屋が立ち並んでいて、人も通る道を象が行進します。みんなおとなしい象で、何も仕掛けない限り、まず人に危害を加えることはありません。小さな子象はみんなでかばうように列の真ん中に入れて進みます。中には怪我をした足を引きずっている象や、片足が短く切断された象もいます。地雷を踏んだのでしょうか。

ミルクを飲ませてもらう象 
ミルクを飲ませてもらう象

隊列を組んで川に向かいます 
隊列を組んで川に向かいます

川につくと、象たちは一斉に川に入ります。あるものは群れて、あるものは一頭づつ、それぞれ水浴を楽しみます。自分で横になり、体の半分を水につける象、鼻で吸い込んだ水を勢いよく全身にかける象、象使いのひとに水をかけてもらいながら気持ちよさそうにウトウトする象。観光客はその光景を川岸から、またはレストランで食事をしながらも見ることができます。バナナを買って象に直接食べさせることもでき、バナナを持った手にいきなり長い鼻が伸びてきてきゃっきゃっと声をあげる子どももいます。観光客の多いわりにここは、時間がゆっくり流れ、静かな静かな界隈なのです。人々の心が穏やかになるせいでしょうか。

水浴びに向かう象たち 水浴びをする象たち
水浴びに向かう象たち 水浴びをする象たち

「スリランカで一番行きたいところは?」と聞かれると迷わずこの象の孤児院を挙げます。ここは、私の一番好きな場所です。 先回訪れたときに、象のウンチで出来たペーパーのメモ帳やノート、封筒などを買ってきました。道に落ちている大きなウンチがとても貴重に思えてきました。

こういう動物にとっては天国のような島、のどかで心を癒される国で、1980年代から内線が起こり、多数派の仏教徒と少数派のヒンドゥー教徒が殺し合っています。日本人にはスリランカは「セイロンティーと象の国」のイメージが強いでしょうが、一方では「同じ国民同士が対立しあう危険な国」というイメージも拭えません。この対立にも外国の諸勢力の影響がおよんでいると言われています。複雑で難解な対立の図式を解くことは、私には難しすぎますが、緊張と対立の中にも、動物を愛する仏さまのような心が健在だということを、ぜひ知っていただきたいと思います。同時にのんびりした象たちの水浴び風景の背後に、目に見えない緊張感が漂っているのだということも知っていただければと思います。

気持ちよさそうに横たわっています 
気持ちよさそうに横たわっています

観光客からバナナをもらっています 
観光客からバナナをもらっています

【特派員情報】

溝口弘子さんからの情報でした。